もどる

    かけはし2021年4月12日号

投書


「アボジ」

SM


――下宿の窓から外をうかがったとき前の道を金剛杖のようなものを持って通る青年たちの声が聞こえた。神田で朝鮮人妊婦の腹を刺したら「アボジ(韓国語でお父さんの意)、アボジ」と叫んだ、「アボジって何のことだろう」と笑いながら話していたという」(『九月、東京の路上で 1923年関東大震災 ジェノサイドの残響』、加藤直樹(かとう・なおき) 著、ころから 発行、1800円+税、108ページ)。

――東京都知事は毎年9月1日に墨田区横網町公園で行なわれている朝鮮人犠牲者追悼式に追悼文を送っていたのだが、2017年に小池百合子都知事が初めて追悼文送付をやめたのだ。その2017年9月には朝鮮人犠牲者追悼式を行なっているすぐ隣で同時刻に、右翼団体〈日本女性の会 そよ風〉らが「六千人虐殺の歴史捏造は許さない」と大書した看板を掲げながら大音量で妨害のための独自の慰霊祭を始めた。そのため例年であれば静かに粛々と行われるはずの朝鮮人犠牲者追悼式が、警官隊に囲まれた大騒音の中でやらざるを得なくなった。その後毎年、その妨害慰霊祭は続けられている」(『〈普及版〉関東大震災朝鮮人虐殺の記録――東京地区別1100の証言』、西崎雅夫(にしざき・まさお) 編著、株式会社現代書館 発行、2500円+税、493ページ)。

 女性は「あなた聞いて。赤ちゃんが今お腹を蹴ったわ」「子どもの名前は何にする」などと話し合っていたかも知れない。腹を刺されて「アボジ、アボジ」と叫んだ妊婦と、妊婦の腹を刺して「アボジって何のことだろう」と笑いながら話していた青年たち。
私には、その青年たちと「朝鮮人犠牲者追悼に敵対している〈日本女性の会 そよ風〉らや小池百合子」や「小池百合子を応援したマスコミや小池百合子に投票した人びと」の違いが良く分からない。
私には日本というシステムが許せない。
(2021年2月17日)




もどる

Back